不自由なく与えて来たつもりだ

絶対拒否、断固突っぱねる。「双方、心底別れたいと考えてるけど?」妻が抑揚無い言葉で、淡々と言う。

「はは、夫婦じゃんか。お互い助け合うもんだろ?」「何度も伝えたでしょ。私は人の心が読める。貴方が何を考え、どうしたいかもお見通し」

相変わらず、キチガイじみた事を抜かす。何度と戯言を聞かされてきたが。「私を嘲るなら書け」

「大体別れる理由は?不自由なく与えて来たつもりだ。筋が通らん」彼女はため息を漏らし、「醜い心が嫌。貴方だけじゃありません。全部に疲れたわ」真顔で言う。

「それで俗世を捨て仏道へ入り、尼さんになると?仏陀の真似事でも?くだらん」吐き捨てる様に呟く。

「それで貴方は?私を病院へ閉じ込め、監禁してるけど何が違うわけ?」五月蠅い。

「治療だ。妄想癖は治さねばならん」幾度目かの嘆息をつき「絶えず他人が思う事、考えが脳内に伝播すれば、どれほど苦しいか。

持って生まれた不憫な身を恨む限りよ」。離婚届は無理。